学生時代、よく行っていた喫茶店には食事メニューがたったの二つしかありませんでした。
トーストとスパゲッティ。
スパゲッティはスライスした玉ねぎを炒め、ゆでおきの麺とツナを加えて塩で味をつけ、仕上げに醤油をサッと回すだけのシンプルなもの。
それでも、ナポリタンとミートソースくらいしか知らなかった僕にとって驚きの味わいでした。
「洋」なのか「和」なのは分からないけれど、なんだか妙に美味しい。
カルボナーラに出会ってからは、あちこちで食べたり、家でもつくったりしました。
ある日、初めて行ったトラットリアでカルボナーラを頼んだら、それまで食べたことがないような美味しさ。
聞いてみたら、卵黄とチーズとパンチェッタだけでつくるんだと。
生クリームを使っていないのに、こんなに滑らかでコクがあるなんて。
そして、イタリアに行った時に町の食堂で食べたパスタは…ちょっと雑な感じでした。
でも、食べ終える頃には、また明日食べに来ようかな、と思ってしまいます。
じわじわと旨くなる。
毎日食べるパスタの味わいはこういうものだと知りました。
さて、数々の衝撃的な体験を経た僕が、家でよくつくるのはトマトソースのパスタです。
以前は玉ねぎを刻んでじっくり炒めてつくっていましたが、今はにんにくの香りをオリーブオイルに移して、ペーストのトマト缶をそのまんま入れてキーマと一緒に煮込み、塩とパルミジャーノで味をととのえるだけ。
これだけなのに、上手にできたときは衝撃的に旨い!
自分で自分に感動しています。